全国市町村議会議員特別セミナー

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26年11月17日~18日の日程で滋賀県大津市の全国市町村国際文化研修所において、第3回市町村議会議員特別セミナーが開催された。

2日間、4人の講師による研修内容は、地域の社会経済の存続に向けた行財政システムのあり方や、この国のゆくえと地方政治のあり方、人口減少社会における地方創生と自治体の役割など。

佐賀県武雄市長、樋渡啓介氏による人口減少など急激な変化に直面する課題にどう向き合うか、その課題解決に向けた取り組みを地方議員に期待する等々、有意義な研修となった。

沼尾波子(日本大学)
◯東京一極集中ではなく地方でも安心して暮らせるなら、という若者が増加傾向にあることに注目したい、都会では金が全てで金がなければ生活ができない、しかし、地方では物心共に助け合いなどの優しさがあり収入は都会より少ないがそれ以上の付加価値がある。

フランスでは政府により子育て支援が充実しており、児童手当などの財源は政府と企業が負担する、子供は社会の宝として税を通じた社会の連帯ができている。また、ドイツでは社会国家の理念のもとで国民は高い税負担を担うが、行政に一定水準のサービス給付を当然の権利としとて要求する。(コミニュティ活動は限定的)

竹村正義(元内閣官房長官)

◯戦後70年の日本、戦争のない平和な日本であった。
バイツゼッカーは「過去を見ようとしないものは、現在も未来もない」と指摘している。日本は朝鮮・韓国の植民地支配を36年間続けた、徹底した日本化を図った、中国でも満州への侵攻、南京での大虐殺など大変な被害を与えた、その歴史は絶対に忘れられることはない反発する感情も理解できる。

中国と国交して40年になるが、周恩来総理は、あの戦争の責任は一部の指導者の誤った人たちによる戦争で日本の国民も被害者だ、一切賠償は求めないと言った。しかし、日本は戦争の反省も未だにしていない。原発事故も総括ができていない、何が問題なのか曖昧なままだ。

少子高齢化に対する懸念が将来に不安をもたらしているが、人口増加も経済の成長もない「定常社会」の時代を迎えている、数ではなく質だ、小さな国でも良い、今の豊かな生活レベルを下げないような政策に取り組むことだ。人口にとらわれない量より質。ローカルカラーをなくした日本、個性がなくなった、個性のある国に戻ることだ。江戸時代は300ぐらいの藩がありそれぞれ自由であった、各藩は個性があり面白い時代であった、江戸時代に戻ろう、成長がなくなった今、個性を競う自治の時代だ。地方議員も国会議員と同格だ、同じ住民から支持を得ている遠慮せずその責任を果たせ。

明治大学政治経済学部・教授(加藤 久和 氏)

◯2013年10月の総人口は1億2,730万人。この3年間で75万人減少、年間25万人の減少、2020年には四国の人口はなくなっていることになる。また30年後には東アジアで同じ現象が起こる。いま、20代は7割が未婚、晩婚化が進んでいる。少子化対策は本当に必要なのか?個人の視点からすると、子供を持つかどうかはその個人が判断することであり、社会政策として少子化対策に取り組む必要は本当にあるのか、という意見もないわけでもない。

子供はその親や家族だけのものではなく、社会全体にとっても有益な存在であり、子供の数が減少すれば、労働力の減少や社会保障制度の持続可能に影響を及ぼすことになる。そうした意味で、子供は公共財的な性格、あるいは正の外部性を持っているとみなすことができる。

ストップ少子化・地方元気戦略(日本創世会議・人口減少問題検討分科会)2014,5.8
「不都合な真実」を正確かつ冷静に認識する。対策は早ければ早いほど効果がある。基本は「若者や女性が活躍できる社会」を作ることである。
日本は、若年層を中心に地方から大都市への地域間移動が激しく、戦後3度に渡って地方から大都市圏に大量に人口が移動した。

このことが、地方の人口減少の最大要因である。
この「人口移動」の特徴は、移動した対象が一貫して「若年層」中心であったことである。将来子供を産む若年層を「人口再生産力」とするならば地方は単なる人口減少にとどまらず「人口再生産力」そのものを大都市圏に流出させることとなった。

このままでは多くの地域は将来消滅する恐れがある。人口の再生産力を表す簡明な指標として若年女性20~39歳の女性人口の状況を見ると若年女性が高い割合で流出し急激に減少するような地域では、いくら出生率が上がっても将来的には消滅するおそれが高い。
地域間の人口移動が将来も収束しないと仮定して独自に推計してみると、若年女性人口が2040年に5割以上減少する市町村は869(全体の49.8%)に達し、そのうち人口1万人未満は523(全体の29.1%)にのぼる結果となる。

人口密度の高い大都市では住居や子育て環境、人のつながりの希薄などで、出生率が低いことが各種データから一般的だ。地方から大都市圏へ若者の移動は日本全体の人口減少に拍車をかけていると言える。

地方活性化の限界

市町村単位での自立はもはや困難。一村一品運動の限界、特産品一つで地域を活性化するには限界がある。一村一品活動がすべて成功したわけではない。企業誘致の限界企業の立地戦略はグローバル化の視点で行われている。従来型の企業誘致には限界がある。

大学誘致の限界。大学は質の時代を迎え、大学であればいいというわけではない18歳人口減少により、大学経営そのものが難しい。

自治体間競争―ゼロサム・ゲームと自治体疲弊
自治体Aにおける大型商業施設or大学等の誘致 ➞ 近隣自治体Bも同様の施設の誘致 ➞ 一定の商圏、通学圏内の経済・人口を奪い合う“ゼロサム・ゲーム”➞ 圏域の経済・人口は有限であり、それぞれの自治体が疲弊するだけの結果に終わる。

自治体(都市)間の連携・ネットワーク化
地方都市Aと周辺市町村(コンパクト化)―連携ネットワーク―地方都市B周辺市町村(コンパクト化)
コンパクトシティと生活圏
コンパクトな中心部+周辺部とのネットワークの形成
1、 コンパクトシティによる都市機能の集約化
重複を避けた効率的な機能の配置
集積効果を想定した中心部の開発

2、 周辺市町村とのネットワーク化
ネットワークの整備:交通:情報
高齢者の移動手段の確保

高松市の目指す将来都市構造

コンパクトな町を目指すことにより、人が行き交う賑わい溢れる街が形成され、将来的に発展を支える基盤を形成することができる。
青森市のコンパクトシティ
都市づくりの方向を市街地の内側に向ける、機能的で効率的な都市構造。
都市を3つに区分し、地区の特性に応じた都市整備推進。
国土のグランドデザイン2050(国土交通省)
●理念
1、多様な選択ができる国土を作る(ダイバーシティ)
2、連携革命により新しい集積の形を作る(コネクティビティ)
3、災害と正面から向き合い、粘り強くしなやかに対応する(レジリエンス)
●2050年の目指すべき国土の姿
・重層的な拠点とネットワークにより、多様な集積を形成
・地方の多様性が大都市の国際競争力を支え、また大都市で生まれるイノベーションが地方に還流され、大都市と地方が相互に「対流」

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●地方都市
・コンパクトシティ
(市役所等を中心とする街中の機能の再生備)
(街なかと周辺部を交通ネットワークでつなぐ)
(住宅は時間軸を考慮して徐々に集約)
(まちづくりと時速可能な地域公共交通ネットワークが一体化)
●地方創生の条件
◯キーポイントは「雇用創出・生活満足」
◯「高学歴・20-39歳女性」の活用
◯拠点都市への集積支援(選択)
◯周辺市町村は「コンパクト化」(集中)
◯バラマキの排除と効率化
●これからの自治体の課題
○自治体間の連携/広域行政と役割分担
○30年後を考えた自治体連合と新たな集約
○面的な合併から機能面の合併へ
○都道府県・市町村という枠組みの再考
○残る自治体と消滅する自治体

以上の内容から、地方消滅が懸念されるなかで過疎地域からの集団移転を進め、応じない世帯については税の負担を重くすることも考えられるなど公平なサービスを受けるには願い通りの生き方ができなくなる厳しい時代になる、経済の成長もなく高齢化と人口減少、社会保障の増加が進行する中で地域間の連携は不可欠だ。30年後を見据えたまちづくりをどうするのか、それぞれの地域で重要な課題に直面していることを感じた。                  

佐賀県武雄市長・樋渡 啓介 氏

全国から注目される武雄市、市長のパワフルな行動力、発想力により今までの自治体運営の常識を一変させた取り組みは、これからの行政のあり方に新しい指標とも言える成果が輝いているようだ。形式や儀礼などは住民にとってはどうでもよい話である、住民側から見た心地よいサービスをどのように提供できるかその一点に集中してこそ新しい発想の転換になる。

会議をできるだけ少なくした、恒例行事も必要性のないものは廃止した、常に周りからの反発があるが住民の満足が基本的な考えになっている。周りは全て敵の中でやってきた議会では常に激しい論争が繰り広げられる、それが面白いのか議会のインターネット中継では視聴率が50%を超えている。

Twtter・facebookを活用した情報発信は大成功。全国から視察が殺到、いま多くの自治体で導入が進んでいる。市長は自治体と「異業種と組む」ことを積極的に推進してきたと力説、図書館は「TSTAYA」に運営委託、年間100万人にも及ぶ集客となっている。本年4月には、公教育と学習塾による「官民一体型」小学校の開講を発表。

無謀とも思える武雄市長の勇気ある行動に賞賛。「市の繁栄と住民に満足を」の揺るぎない行動が町の発展と武雄市民の満足につながっている、更に挑戦を続ける市長に市民からの期待も大きいのでは。トップの信念や考えが職員や議会に反映されるには相当な忍耐が必要だが、失敗はつきものだ反省はしない前に向かって進むだけだと主張する。結論は「あまり気にしない」ことが大事。今回の研修では多くのことを学んだ。
以上報告。
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