命に係わる「水」が狙われている

健康のためには水が重要な役割を果たしているという話はよく耳にします。厚生労働省でも「健康のため水を飲もう」という水の推進運動を行っているが日本ミネラルウォーター協会が発表している統計では、1997年の日本人の1人当たりの消費量が6.3リットル/年だったのに対し、2017年では28.4リットル/年と約5倍近く伸びている、これは健康志向の高まりと比例して「水」への意識が高まっているからかなのか?

藍住町の水道水は県下でも良質なほうだと思っている。地下水が源水であるため夏は冷たく冬は温かい、蛇口を捻ればいつでもそのまま飲むことができる安全な水道水のありがたさなど日常ではあまり意識したことはないが、世界の水問題を知れば、命に代えても絶対に守らなければならないのは「水」である。その為には、今後、世界の水事情がどうなっていくのか正しい情報を知り対策を考えることだ。

「水」に群がるレントシーカーたち

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水道水が普通に飲める地域、国連加盟国196カ国の中で、たった15カ国しかありません。日本はその筆頭です。アジアではこの日本とアラブ首長国連邦、二つの地域だけです。。毎日お風呂に入れる。それも実はすごくぜいたくなこと。世界の各地域では、水道管も日本のようにしっかり整備されていない、そのため漏水率40%だと言われている。我が国は全国平均5%程度と水道管と浄水場の技術は世界トップレベルだ。

世界最大大手の食品メーカー「ネスレ」の調査によると地球上の水はどんどん足りなくなっている。2025年までに、地球上の全人口の3分の1が、もうきれいな水にはアクセスできなくなると予想。命に関わるライフラインの水にアクセスできなくなった時、いったい何が起こるか。水の奪い合い争いが起こると予想している。

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しかし、水が足りなくなればなるほど、ビジネスをしている人たちにとっては、朗報なのです。水ビジネスの市場が、過去20~30年の間にものすごい勢いで拡大してきた。ミネラルウオーターの市場というのは、どんどん肥大化している。
日本の水資源は、とても優良なので、水源のある土地を買い取って、そしてどんどんくみ上げてボトルに詰めて、世界中に輸出している。グローバルビジネスとしてはとても効率よくパイが大きい。だが、そこに住む住民の人たちからは、大きな反発を受けている。
どんどん地下水をくみ上げると、地下水はだんだん枯渇してくる。そして環境にも大きな負荷がかかる。廃水による環境汚染。でもほとんどのケースでは、採水しているグローバル企業のほうが力が強くて、環境破壊と住民たちが文句を言っても、裁判に負けてしまうのが現実だ。

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世界銀行の副総裁であるイスマイル・セラゲルディ氏は「20世紀、人間は石油をめぐって争いあった。世界中で戦争が起きた。21世紀は、石油にかわる新しい戦争の火種が、また出てくるだろう。21世紀は、水戦争になる。枯渇する水をめぐり、世界中が奪い合い、争いあうことになる」。と明言している。

80年代から、世界銀行と、IMF、この二つの国際機関がタッグを組んで、途上国にお金を融資して、水道のインフラをそこに敷くということを進めてきた。途上国は、IMFや世界銀行からお金を借りて、そして海外先進国の水事業者、グローバル企業に、水のインフラを全部お願いする、そういう流れができていった。借金はどんどん増える。でもそれと引き換えに投資してもらって、そして水道が、水が手に入る。でも、どうしてその時、水は民営化でなければいけなかったのか。「ワシントンコンセンサス」。とは、ワシントンを中心に世界の経済界、それから金融業界が、金融と貿易は自由化していく そしてもう一つ、規制緩和、これがセットでした。今でいうとTPPの前身である。 ワシントンコンセンサスを背景に、4000億ドルの水ビジネスに投資せよ。

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これをかけ声に、どんどん規模を大きくしていったのが、水業界の三大企業。イギリスのテムズウオーター、フランスのスエズ、他、日本でもいろいろな自治体が一部業務を委託している、ベオリアウオーター、。この三つの企業は、2000年の時点で水ビジネスの7割をコントロールしてきた。 このように水ビジネスを運営することでものすごくもうかりました。今は中国の企業なんかも、どんどん進出しております。

2000年から始まった世界水会議。ここで、新しいキーワーが出てきた。「フルコスト・プライシング」。それは、途上国に投資して安心で安全で質のいい水を、水のインフラをいろいろな世界各地に敷いてきた。我々は、巨額の投資をしている。巨額の投資をして、開発にもたくさんの経費がかかっている。ならば、かかった経費を回収する。フルコスト・プライシングというのは、水道ビジネスにかかった経費を、水道を消費する側から回収すると、そういうコンセプトだ。

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しかし、水ビジネスがやってきた地域の途上国のある人は、「水や太陽の光や、そこら辺に生えている草や、大地からの恵み。そういうものに、なぜ値札がつくのか。それは神様からいただいたものではないんだろうか。なぜそれが、いつのまにか大きな商売になってしまったのか。」

フルコスト・プライシング。先ほどのワシントンコンセンサスと同じラインアップだ。「水は無限にはない。有限なのだから、これは開発者の権利というのが守られるべきだ。だからこれからは、しっかり堂々と回収していこう」。そういうふうになった。
その後、国家間のさまざまな経済条約、自由貿易条約、そういうものの中にもすべて反映されるようになった。
80年代には、アメリカで株主至上主義というものが息吹を上げた、ワシントンコンセンサス、アメリカはまず国内の政策から始めた。規制緩和、法人税減税。企業はどんどん大きくなりました。そして財界の中で、食物連鎖のように食い合いが起きた。あらゆる業界は、片手の指に入るほどの少数の巨大なグローバル企業の傘下におさまった。

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NAFTA自由貿易協定では、水道についての3つのルールが決められた。
➊商業用の水源を利用するときに、国内企業を優遇することを禁止する。
➋水の輸出入による環境被害は、企業側に罰則なし。 
➌国民の命と健康、そして環境問題、もしも加盟国が国内法でそれを守ったら、これは訴訟の対象になると。TPPもそうなんですけれど、こうした自由貿易条約の中にこういったルールがある。

これは投資家が訴訟をする国際裁判所、国際投資裁判所で裁判が行われる。ただし、ここでの判決は何が物差しになっているのか。判決の基準は、あくまでも投資家に損害を与えたかどうかがものさしになる。

その判決を下す裁判員たち、これはほとんどが弁護士です。企業弁護士はすごく訴訟になると儲かるので、この訴訟ビジネスというのが、今すごく流行っている。

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投資家が回収するリターンも、年々どんどん大きくなる。途上国を筆頭に、例えばこのボリビア、フィリピン、先進国ではスペイン、アメリカ、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、それからインドネシア、メキシコ。いろいろな国にどんどん途上国だけではなく先進国にも、水ビジネスというのは広がってきた。

水ビジネスを運営するとき水ビジネスを経営する会社のCEO、または株主だったら、利益を上げるために株主報酬を上げるために、まず何をするでしょうか。水ビジネスを始める企業が最初にやることは、二つです。一つは料金を上げる。もう一つは経費を下げる。この二つですね。
その経費は、どこにいくのか。先ほどの世界水会議、2000年の世界水会議で話し合われたフルコスト・プライシング。こちらです。経費はすべて水道料金に上乗せできる。

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経費がかかる分、その分価格に転嫁されるのですから、水道料金はどんどん上がる。南米のボリビアでは、2年で35%。南アフリカは4年で140%、オーストラリアが4年で200%、フランスは24年で265%。イギリスは25年で300%。水道料金が上がってしまった。
南米ボリビアでは、1カ月の水道料金が月収の3分の1になってしまった。これは大騒ぎになりました。収入が少ない人たちにとって、月収の3分の1が水道料金になってしまうというのは、これは死活問題です。

アフリカでも同じです。だから100万人、200万人、1000万人単位で、水道料金が払えずに水道を止められてしまった。公園の水もチャージされてしまった。ボリビアでは暴動になりました。命に関わる水にアクセスできない。政府は何をやっているのか。人々が暴動を起こし、政府は結局戦車を出して、軍でそれを制圧するしかなくなってしまった。ボリビアのコチャンバという地域では、コチャンバ水戦争という名前で、これは歴史の一つの汚点となりました。

南アフリカでは、水質チェックがおろそかにされて、企業のコストカットによって水がどんどん汚くなっていきました。コレラ菌が繁殖して、何百万人もバタバタと死んだ。

先進国。パリでは、水道管が劣化していたために、市長さんが「じゃあ水道を民営化しましょう。企業のノウハウを使って無駄をカットしてもらって、企業に運営してもらえば、水道管の問題も解決する。しかし、水道管は直りませんでした。水道料金は上がったのに、水道管が直っていない。 

アメリカ全土で1000カ所の水道被害など、フランスやボリビアやフィリピンや、世界各地で水の運営権、水道の運営権を企業に売却した地域が、数々の問題に直面した。劣悪な管理運営の仕方。企業に運営権を売ってしまうと、ここまでは自治体が口を出せなくなるので、非常に劣悪になっていたことがあとからわかった。

それから、、設備投資をあまりしなくなっていた。 そして、料金の値上げ。一番最初に直面する水道の運営権を売却した場合の副作用でした。水道料金がどんどん高騰して、住民たちがもう払えなくなったところもある。、水道は公共事業である限り、それは自治体の議会がチェックすることができる。しかし、運営権まで売却してしまうと、民間事業者を監督するということは非常に難しくなります。

そして、先ほどの人員削減と劣悪なサービスの品質。人件費カット、これも日本でも人ごとではない。人件費をカットして水質チェックや水道管の修理とか、人を減らして専門家ではなくて、派遣社員を使うとか。そういうふうにして人件費を減らした場合、必ず質が落ちていきます。水質が落ちるということは、私たちの命と健康に関わることですから、これもまた大問題になった。

水道の運営権を売却するコンセッション方式というのは、どんどんその副作用が明らかになってきて、とうとう2000年をピークに、世界各地で民営化したものをもう一度公営に戻そうという流れに切り替わりました。2000年から2017年の間に、世界で、一度民営化した水道をもう一度再び公営化に戻した地域、37カ国267カ所にのぼりました。コンセッション方式の大失敗です。

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コンセッション方式によって運営権そのものを売ってしまった場合、その契約の期間というのは平均15年から20年。途中で民営化を再公営化したいというと契約違反になり高額な違約金を払わなくてはいけない。ボリビアでは払わされた違約金は、日本円で約25億円でした。25億円あれば、水道が引いていない貧困地域の家庭に、何万人もの家庭に水道を引くことができた。3万人以上の公務員を新しく雇うことができた。ボリビアにとっては、とても貴重なお金でした。でも違約金で全部飛んでしまった。

アルゼンチンでは水道の運営権を6社の企業に売っていました。全て再公営化しようとしたとき、6社すべてが裁判でアルゼンチン政府を訴えた。その結果、すべて負けました。損害賠償は6社あるうちのたった1社とってみても、日本円で165億円という、法外な損害賠償を払わされていた。

10年のうちに、地元の水道事業者はどんどん倒産します。それから自治体の水道局の中の水道技術者もいらなくなりますから、水道技術者を育てるのにお金をかけなくなる。専門家を1人育てるには、最低10年かかる。それでも各国の地域は、再公営化にするという方向に舵を切りました。

ところが、日本では水道の運営権を企業に売却できる法律を作った。2018年7月5日、改正水道法というものが衆議院を通過しました。。一番大切なことを国民は知らされない。知らされないままに非常に大事な法律が、国会をどんどん通過していく。このとき通過した法律のポイントとは何だったでしょうか。

国民の知らないうちにとんでもない法律が改正される
❶有事のときの責任は、企業ではなく自治体です。(災害時の復旧など自治体の責任でやらなければいけません)
➋料金の変更は、届け出は不要です。(企業は自由に料金を上げれれる。もちろん自治体にも住民にも選択肢はない独占企業だから言いなりにならざるを得ない)
➌契約期間は15年から20年。(他国の例ではこの間に最悪の状況になる)
そして、一番重要なところ。
➍自治体が運営権を売却した場合、自治体が国に借りている借金の利子、これ最大全額免除します。これは自治体にとって、無視できないメリットでした。

このような法律がなぜ通ったのか。実は世界中が折り返し地点から帰ってくる、ちょうどまさにそのタイミングだったのです。 では、なぜ日本が水道の民営化に舵を切ったのは、どんな背景、そしてどんな国の、いったい誰の思惑がそこにあったんでしょうか。

地方議会の責任は重大
2002年に日本の水道事業を民間に委託するという扉を開いたときの経産大臣、竹中平蔵経産大臣は、今や日本の有識者会議、経済財政諮問会議とか、さまざまな民営化を推進している。

有識者会議のメンバーの大半が経済界の出身。その方々が主体になった有識者会議で、日本の財産が次々に法改正によって値札が付けられている。これが今、日本で起こっている一番最も危機的な状況の一つではないかと、私は思っている。

日本で水道法が改正されて、そのあと次々に、大阪ですとか、宮城などいろんなところがどんどん手を挙げて、そして水道民営化、水道の運営権を売却するということに前向きになっている自治体がいくつもいくつも出始めたが、一方で、「いや、水道民営化は少し慎重にした方がいいだろう。

うちの自治体では、ちょっと水道民営化は今はやりません」というふうに反対の方向に進んだ自治体もある。例えば大阪市では橋下、吉村市長の再三の提案を議会が否決した、神戸市も反対、それから静岡の浜松市もいったん凍結。

このように市民の反対の声、市議会から反対の声が非常に多かったので、いったん凍結。そのほか秋田県ですとか、ほんとにいくつかの県では、「うちではやらない」ということを早々と表明している。

水道事業というのはあくまでも自治体ベースで決定するので、自治体に住んでいる市民がどう判断するか。自分たちの水のインフラをどうしていくかということを、これから考えて決めていかなければいけません。

宮城は、上水道、下水道、工業用水道、九つの事業をまとめて、一括で民間に売却し来年入札の候補者を候補の企業を選んでいく。2021年から開始するとしている。しかし、だいたい水道というのは、ほとんど自治体ベースで市町村ごとのはず、宮城の場合は広範囲で、全部一括で売ってしまおうという、非常にダイナミックなやり方を取ろうとしている。

今はインターネットの時代、ほんとに有権者の側も、少しずつ少しずつ正しい情報が入ってくるようになった。特に水道の場合は、そこの地域に住んでいる住民が、口コミや、SNSなど、それから勉強会、そういうものでどんどん、こういった事実を地道に広げていって、それによって地方議会に声が届いたという自治体も、かなり今増えてきている。

「うちの自治体では水道の運営権は売りません」と、はっきり表明しているところがだんだん増えてきた。例えば、九州の10の都市。長崎市、佐世保市、福岡……福岡市、北九州市、熊本市、佐賀市、大分市、宮崎市、鹿児島市、久留米市、こういったところが、水道の運営権は売らないということを表明している。それから、神戸も市民がかなり声を上げて、「水道の運営権は、うちは売らない。」と、いうことを表明しました。

青森市、秋田市、福井、青森市も、福井県、新潟県、長野県、これは、県議会で「水道の運営権は売りません」という方針を示している。長野県に関しては、これは、自民党を中心とした県議が、「水道の運営権を売るということは慎重にしたい、慎重にしてほしい」という意見書を出している。

特に地方議員として水道事業民営化は、世界の例を見る限り、そこに暮らす住民の死活問題になりかねない、しっかり勉強会などを開き、安心して暮らせる社会を目指す責任がある。グローバル化の推進によって、安全な生活が脅かされる脅威が迫っていることを自覚しなければいけない。